陰山英男のヒューマンラボ 子どもたちの学力向上に尽力している陰山英男先生が、子どもの教育、日本の将来について語るTOKYO FM「陰山英男のヒューマン・ラボ」。ここではダイジェストをお送りいたします。

育てる住まい CRESCASA隂山先生監修ブックレット 「子どもが賢く育つ家づくり」プレゼント中!陰山英男のヒューマン・ラボ スペシャル 『子どもの学力は短期間で伸びる!講習会』 レポート 2008/12/22 @一ツ橋ホール

旧北上川が校舎からみえる、自然に囲まれた石巻市立開北小学校で1年生の担任教諭をしていた千葉先生が被災したのは5時間目が終わって、教室で生徒達に帰りの準備をさせている時でした。立っている子もいれば、座っている子もいる時に、あの長い揺れがおこり、生徒達はもちろん、千葉先生本人も今まで経験したことのない揺れにとても驚いたそうです。

地震が起きて、まず先生が行ったことは、生徒らを机の下に避難させることでした。そのあと混乱しながらも、揺れがおさまった後に教室の外に避難をするだろうと考え、教室のドアを開けて自分の身体でドアが閉まらないように押さえたと聞きました。その時に隣のクラスの先生も同様にドアを押さえていたのが見え、先生がとても不安そうな顔をしていたのに気づいたそうです。しかし千葉先生は生徒達が怯えている時に不安な顔をしてはいけないと思い、必死で平静を保とうとしたそうです。それを聞いて、どんなに自分が動揺している時でも、とっさの判断をして動くことはもちろん、先のことや生徒達のことを考えて行動するということが必要だと感じました。

その内に揺れがおさまりましたが、普段行われる避難訓練とは異なり、放送の機械が使えなくなっていた為、避難誘導の放送がされなかったそうです。その為、先生方が校舎を周り、直接外に避難するよう誘導したと聞きました。千葉先生は避難訓練と同じく、生徒達を廊下に並ばせ、急いで外へ避難したそうです。先生が担当していたのは、小学校1年生でしたので、やはり怖くて叫んでいる子もいましたが、ほとんどの子は落ち着いた様子で、静かに話を聞き、先生の指示に従っていたそうです。それは普段の生活でも同じだったようで、放送が流れたら話を聞くという姿勢を日常的に先生が教えてきた素晴らしい結果だと思います。緊急時でも慌てず避難訓練どおりに動くことができるのも、とても大切なことだと思います。何度も避難訓練を行ったとしても、本当に必要な時に訓練通りのことができなければ意味がありません。

無事に教室からグラウンドに生徒達を避難させましたが、すぐ家族に生徒達を引き渡すことはできなかったそうです。なぜなら学校の周辺も浸水していたり、家が浸水し、水が引くまでは家から出ることができない家庭もあったからです。生徒達を全員家族に引き渡すのには4,5日かかったと聞きました。震災当日には30人ほどの生徒が学校に残ることになった為、そういった生徒達を先生方が保護することになりました。ですが校長先生は先生方に、もし自分達の家族が心配ならば一度帰宅してもいいという指示を出されたそうです。また当時身重だった千葉先生に対しては、個人的にも帰ったほうがいいと伝えたそうです。しかし千葉先生は自分の担任の生徒達が残っている為、学校に留まることを選びました。学校での避難は停電のため電気が使えず暖房器具が使えないという、辛いものでした。避難していた人々は緊急時の為に用意されていた備蓄倉庫の毛布を使って暖をとったそうです。その毛布も生徒や、避難してきた地域の方を優先に使っていたと聞きました。どんな緊急時でも自分のことだけではなく、人のことを考えることができること、これは単純なことですが、実際に行うことは本当に難しいことだと私は思います。人と人とが想いやり、そして助けあうことで、ひとりでは不可能な困難を乗り越えていけるのです。

また開北小学校への津波による被害は、校舎の1階部分の床上が少し浸水した程度で済んだそうです。しかし校舎自体に被害が少なかったとはいえ、地震や津波で家族をなくした生徒達もいました。今ではようやく学校として再開することができるようになりましたが、苦労がないわけではありません。開北小学校は避難所としては指定されてはいませんでしたが、避難所に指定されていた近隣の中学校が浸水して避難ができなかった為に、小学校へ避難されている方が最初は600人ほどいたそうです。日が経つにつれて徐々に避難されている方が減っていき、今では体育館に収まりきるほどになったそうですが、その為に体育館が使えないままです。また学校として利用が不可能になった他の小学校に、特別教室などを貸しているため、その教室も使うことができません。毎日、校長、教頭をはじめとする学校の職員が交替で学校に泊まりこみ、今も避難している方への対応をしなくてはいけないという問題もあります。しかし避難活動についてのシステムを確立することはとても苦労をしたそうです。なぜなら避難活動については、学校側もどうすればいいのかわからない上に、行政の対応も円滑に行われていない為、学校側が避難所についての指示を出し、手探りでできることをしなければならなかったからです。

今回この開北小学校のように避難所として指定されていない学校だとしても、避難所になる場合もあるのを知り、学校の教職員に避難活動についての研修を行うことも必要だと気付かされました。そうすれば実際の現場でどうすればいいのかわからないなどといった戸惑いはなくすことができるのではないでしょうか。教職員だけではなく生徒達も、普段から緊急時に備えて学び、訓練することで、万が一の時の被害を抑えることができると思います。

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プロフィール

陰山英男(かげやま ひでお)

1958年、兵庫県出身。
89年に兵庫県朝来郡朝来町立山口小学校に赴任。「読み・書き・計算」の徹底した反復学習、「早寝早起き朝ご飯」を二本柱に、基礎学力の向上を図る「陰山メソッド」を確立。同校出身者の国公立大学進学率が類を見ない高さだったため、教育実践がメディアで紹介されるようになる。

2003年、全国公募により、広島県尾道市立土堂小学校校長に就任。06年4月より、立命館小学校副校長・立命館大学教育開発支援センター教授を務める。

小学館の通信添削学習『ドラゼミ』総監修者。著作・共著多数。文部科学省・中央教育審議会教育課程部会委員/安倍前首相の諮問機関「教育再生会議」有識者委員/大阪府教育委員会教育委員

陰山英男 Official Web Site

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