陰山英男のヒューマンラボ 子どもたちの学力向上に尽力している陰山英男先生が、子どもの教育、日本の将来について語るTOKYO FM「陰山英男のヒューマン・ラボ」。ここではダイジェストをお送りいたします。

育てる住まい CRESCASA隂山先生監修ブックレット 「子どもが賢く育つ家づくり」プレゼント中!陰山英男のヒューマン・ラボ スペシャル 『子どもの学力は短期間で伸びる!講習会』 レポート 2008/12/22 @一ツ橋ホール

これまで3回にわたって、石巻市の先生方に「震災の際に何を感じ、どう動いたか」について話をきいてきました。そして、私はあらためて日本の先生が優秀だと感じました。ひとつも判断を間違ってはいけない厳しい状況で即座に決断をし、子どもたちを安全に導くということは、誰もがやろうと思ってできるものではないと思います。

階下が浸水し、ひとつの教室に300人でぎゅうぎゅうになって一晩を過ごす中でも、子どもたちを見守った田母神先生や、ご自身が妊娠されているのをものともせず、低学年の子どもたちを安全に避難させた千葉先生、とっさの判断で指定されていた避難地よりも高地に移動し、津波の難を逃れた若生先生。3人とも淡々と被災した時の話をされましたが、どれも本当に驚かされる話ばかりでした。

こうした震災の時に現場にいた先生方がどのように判断をし、どう動いたかという話は、毎日のようにたくさん流れてくる震災報道の中でも、あまり話にはでてきません。しかし危機的状況下で先生方がどのように判断したかということを知ることは、子どもたちの安全の為にも知っておくべき重要なことだと思います。それを知っておくことで、いざ自分が同じような状況に立たされた時、どうすれば子供たちを守ることができるかを判断することができるからです。

先生方からお話を聞くと同時に、わたしたちの課題もみえてきました。震災に限らず学校が避難場所として使われることがあります。ではその避難所になった学校を先生方がどのように運用し、避難された人々の対応をしていくか。実はそれについてのマニュアルは学校内にまったく存在していません。おそらく学校や先生方がするべき業務に避難所での対応というものが入っていないからだと思います。ところがいざ危機的状況になればマニュアルが存在していないといっても、学校は避難所として利用されることになります。そのギャップの中で先生方は戸惑い悩みながらも、なんとか運営しているのが現状です。お話の中で避難所の人々の中から「○○係」といったものを作り、避難所を運営していったというものがありました。これは学校で子供たちに係活動をさせるのと同じで、先生方が日々おこなっていることが活かされたと思いました。だからといって先生方が自主的に動くことを期待して、避難所に関する研修を実施しないのでは、今後起きるかもしれない危機的状況への対処ができません。今回の地震で初めて校内にある緊急物資をいれておく部屋に足を踏み入れたというお話もありました。停電で明かりもない中、物資の場所もわからない中で探すような状況におかれるという問題点も解決しなければなりません。

それらに加えて今後大きい問題としてあげられることは、避難所が普通の学校に戻っていくというプロセスです。まだ9万人以上の方が避難所にいるという話も聞きましたが、そういった方々が避難所になっている学校から移動し、学校が学校として機能させることは容易ではありません。また学校として機能させようとして避難所の方々と先生方の対立がおきないようにもしなくてはいけません。

石巻市を訪れた際に、私はその先にある福島県二本松市にも足を運びました。実はこの二本松市という場所は私と非常に深い関わりがある土地でもあります。というのも二本松市の市長から「陰山メソッド」を用いて、市の子どもたちの学力をのばしてほしいというお願いをされ協力したことがあるからです。

この二本松市に私は真っ先に絵本を寄付しました。なぜ絵本かといいますと、電話が復旧して市長に連絡を取った際に「避難所の子供たちがかわいそうで、本を送ってほしい」と言われたからです。私はその日のうちに京都の本屋に行って本を集め、ちょうどきていた福島宛の支援物資の便として送った為、翌日にはその本が福島の子供たちに届いたと聞きました。そうしたご縁もあって、二本松市の市長のもとを訪ねました。

そこで市長からお話を聞いて驚いたことがありました。阪神大震災以来、二本松市は学校が避難所になると想定して、あらかじめ校舎の耐震補強工事を行っていたのです。しかし耐震補強工事を行うにはとても高額な費用がかかります。その費用については二本松市が独自で負担をして、学校の耐震工事を行っていたそうです。最後の学校の耐震補強工事の終わった日は、3月11日の東日本大震災の二週間前、二本松市の校舎は地震にも耐え、すべて無事でした。その為、二本松市は原発に近い浪江町の子どもたちを約350人ほど引き受けているそうです。そして二本松市の子どもたちと同じように浪江町の子どもたちにも同じように接し、私の学習法を用いて勉強をしているそうです。

今回抱えている問題は地震だけではなく、放射能の問題もあります。例えば二本松市の放射能をおびた土の問題については文部科学省に再三かけあっているそうですが、難航しているようです。こうした問題は耐震補強工事のように二本松市だけで解決することは不可能です。学校や市だけではなく日本全体で復旧への努力をしていかなくてはいけないと切に感じました。

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プロフィール

陰山英男(かげやま ひでお)

1958年、兵庫県出身。
89年に兵庫県朝来郡朝来町立山口小学校に赴任。「読み・書き・計算」の徹底した反復学習、「早寝早起き朝ご飯」を二本柱に、基礎学力の向上を図る「陰山メソッド」を確立。同校出身者の国公立大学進学率が類を見ない高さだったため、教育実践がメディアで紹介されるようになる。

2003年、全国公募により、広島県尾道市立土堂小学校校長に就任。06年4月より、立命館小学校副校長・立命館大学教育開発支援センター教授を務める。

小学館の通信添削学習『ドラゼミ』総監修者。著作・共著多数。文部科学省・中央教育審議会教育課程部会委員/安倍前首相の諮問機関「教育再生会議」有識者委員/大阪府教育委員会教育委員

陰山英男 Official Web Site

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